仏教の本を手当たり次第に読み始めたのは、たまたま仏教が最も身近な宗教だったからである。
10年間、ひまを見つけては仏教書を読みつづけた。
いろいろ教えられることがあった。
たとえば人間みなこれ仏(ほとけ)であり、道端の一木一草もまた仏だという思いで見るべしという教えがある。
そこで朝、出勤時には道端の木石に「おはよう」といい、じいさん、ばあさんを見れば仏と感じるように心掛けた。
すると、あることに思い至った。
電車や公園で居眠りしているおじいさん、疲れてげんなりしているおばあさん、よだれを垂らし、目ヤニをため、しわくちゃの顔は、みにくいと思って見れば確かにみにくい。